Vol.3 No.321 自動車用プラスチック部品=CASE時代の材料開発=
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≪ニーズは重い電池の軽量化≫
【バッテリーケースの材料と軽量化】
HEVの電池容量は1kWh程度であり、PHEVは10kWh前後、EVは20〜80kWhで、EVは電池セルの搭載量が多い。EVの課題は航続距離の
短いことであるが、この航続距離を延ばすにはより多くの電池セルを搭載しなければならない。EVは電池セルの搭載量が多いこと
から電池パックの重量が重く、電池容量40kWhで重量は約300kg、60kWhで400kgを超え、容量がさらに増えると500kgを超えること
もある。ガソリン車のエンジンは100〜200kg程度であるが、EVの電池は250〜600kgが一般的とされている。電池パックはエンジン
よりもはるかに重く、この差がガソリン車とEVの車輛重量に大きな影響を与えている。
電池パックの重量が重い要因の一つにバッテリーケースの重量がある。テスラS(テスラ社)のバッテリーケースはアルミ合金製
であるが、その重量は115kgとされている。側面衝突などの衝撃から電池モジュールを守るためフレームや底板を厚くして強度が
確保されている。ユニプレスが生産しているリーフ(日産)のバッテリーケースは高張力鋼板(ハイテン)によるもので、サイズは
120×157×23cmである。重量はフロアが56kg、カバーが12kg、合計68kgで、ケースのみで約70kgの重さである。
電池パックの重量は車種によって異なるが、車輛重量の20〜40%程度を占めているとみられ、車輛の軽量化には電池パックの
軽量化が不可欠である。しかし、電池セルの搭載量を削減すると航続距離や走行性能が低下するため、搭載量を維持しながら
バッテリーケースを軽量化しなければならない。このためケースの構造や材料の変更などが検討されており、軽量なバッテリー
ケースの開発が進められている。
車輛の軽量化は重要な戦略の一つであり、重い電池パックの軽量化ではバッテリーケースの材料切り替えが不可欠で、アルミ合金
や高張力鋼板から樹脂への移行が検討されている。しかしLiBの熱暴走への対応や、衝突時の衝撃安全性などから金属への信頼度は高い。
また、難燃性に関する法規制も検討されており、樹脂にとってバッテリーケースは進出の難しい分野になっている。しかしながら、
金属と樹脂を組合わせたマルチマテリアル化や樹脂を多用したケースなど様々な製品の開発が進められている。