Vol.3 No.315 微多孔質フィルムのマーケットと新動向 この書籍に移動 >>>
≪ミリ波に対応する低誘電微多孔質フィルム基板≫
【ポリイミド微多孔質膜の用途開発】
(1) ミリ波アンテナ用低誘電率フィルム
ポリイミド微多孔膜はミリ波アンテナ用基板としても開発が進められている。特開2019−199616
(日東電工)にはミリ波アンテナ基板として、空孔率が70%以上、平均孔径が10μm以下、独立孔が
全孔の80%以上を占めるポリイミド微多孔膜が提示されている。このフィルムは10GHzの誘電率が
1.5以下であり、乾燥誘起相分離法によるミクロ相分離構造と超臨界抽出法によって作製される。
ポリイミド前駆体の有機溶媒(NMP等)による溶液に多孔化剤を添加し、PETフィルムや銅箔などの
基体に塗布してフィルム状に成形した後、乾燥により溶媒を除去する。多孔化剤を前駆体中で不溶化
させて、多孔化剤が分散したミクロ相構造のポリマー組成物とし、超臨界二酸化炭素などを用いて
多孔化剤を抽出したあと前駆体をポリイミドに変換(イミド化)するものである。多孔化剤の抽出に
よって多孔質構造となる。ポリイミド微多孔膜の誘電特性として、フィルムの空孔率と誘電率は概ね
比例しており、空孔率が高いほど誘電率は低くなる。空気の誘電率はプラスチックより低く、その特性
がよく現れている。
(2) 低誘電率プリント配線基板用フィルム
情報通信機器で大容量の情報を処理するには使用周波数帯を高周波側へシフトしなければならないが、
従来のプリント配線基板を高周波領域で使用すると高速通信の遅延、減衰、回路内の発熱などの問題が起き、
高周波に対応した基板が必要である。ポリイミドの微多孔質フィルムは高周波に適した低誘電特性を有して
おり、各種基板用フィルムの特性例を表1に示す。ポリイミドフィルムを微多孔化することにより、耐熱性
を維持しながら誘電率が3.4から1.9に下がり、誘電特性が大きく向上する。携帯電話機やパソコンなどの移動
通信機器では5Gへの移行が進められており、超高速・大容量通信に対応する低誘電基板が不可欠になりつつある。
ポリイミドの無孔質フィルムは既にフレキシブルプリント配線基板に使用されているが、5Gの普及によって
微多孔質フィルムへの移行が進展すると予想される。