Vol.3 No.327 バイオマスプラスチック&グリーンコンポジットの開発と市場戦略
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≪=世代の強化繊維はCO2を吸収する≫
【植物繊維強化複合材料の環境適性】
プラスチック複合材料の強化材としてガラス繊維、炭素繊維が多く使用されているが、これらのコンポジット(GFRP、CFRP)は
リサイクルが難しく、環境負荷の大きい材料である。このため環境負荷低減を目的に、ケナフ、フラックス、ヘンプ、ジュート
などの植物繊維や、木材パルプのセルロース繊維を強化材にしたグリーンコンポジットが生産されており、サスティナブルな
複合材料として採用が広がりつつある。ガラス繊維、炭素繊維などの無機繊維は製造時のエネルギー消費量が多く、リサイクルが
困難である。ガラス繊維は1kg製造するのに2kg程度のCO2が排出され、炭素繊維に至っては1kgの製造にCO2が約20kg排出される。
リサイクル炭素繊維のCO2排出量は2.6kgであるから、炭素繊維はリサイクルすることによってCO2を大幅に減らす
ことができるが、それでもガラス繊維とほぼ同じである。しかしながら強化材にケナフ、フラックスなどの植物繊維を用いれば、
繊維に起因するCO2の排出がなくなる。植物は生育時にCO2を吸収するためカーボンニュートラルの効果があり、強化材をガラス
繊維から植物繊維に代えることによって、複合材料のCO2排出量は約40%減少するとされている。植物繊維は温室効果ガスの削減に
大きな効果を発揮し、マトリックス樹脂にバイオマス樹脂を使用すれば、その効果はさらに大きくなる。またGFRP、CFRPは焼却処理
した後に無機繊維が残渣として残るが、植物繊維複合材料は焼却しても無機物の残渣がなく、焼却処理が容易である。
しかし、植物繊維は耐熱性や耐衝撃性に劣り、吸湿性が大きいという強化材としての欠点もある。また、天然繊維であるため繊維の
特性が生育環境によって変わり、均一性に劣る。さらに気候変動などで収穫量が変わり、繊維の安定供給が保証されていない。特に
一年草の植物は気候変動の影響を受けやすく、得られる繊維の価格も安定しない。植物繊維には天然特有の不安定要素はあるものの、
カーボンニュートラルで持続可能な素材であることから、今後はその重要性が増していくとみられる。