Vol.3 No.313 セルロースナノファイバーの実用化と技術開発
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≪先行しているのは付加価値分野であるが、今後の主力はコンパウンド≫
【CNFのマーケット展望】
医薬品、化粧品など付加価値の高い分野では、個々の商品に用いられるCNFが微量であるため市場規模
は小さいが、高い価格が許容される分野である。食品や電子デバイスも種類によっては、化粧品と同様に
CNFの需要量は少ないが、高価格での供給が可能な市場である。自動車部品、家電製品などはコンパウンド
に使用されているガラス繊維、タルクの代替が中心であり、その市場規模は大きい。現在はまだCNFの価格
が高いこともあって、CNFコンパウンドの需要は非常に少ないが、コストが下がり、安全性などが実証され
れば、CNFの主力用途になると予想される。建築材料には低い解繊度のCNFが適用でき、付加価値はあまり
高くないが、市場規模は大きいとみられている。
現在のCNF採用は透明性、増粘効果、分散安定性、乳化安定性、チキソ性など、他の材料にはないCNF特有
の性質が受け入れられ、評価されているもので、使用されている理由は明確である。少量の添加で高い効果
が得られるため、既存製品との価格差はあまり問題にならず、採用商品が着実に増えている。このような
高付加価値分野は今後も多様な商品に使用されていくと予想されるが、この分野でCNFの量的拡大を期待する
のは無理であろう。CNFの需要量を大きく拡大させるのは、やはり自動車部品や家電製品などのコンポジット
分野であり、この分野での本格的な採用拡大が望まれる。